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    【論文発表】キャリア教育_キャリア教育に関する分析と考察④

    admin on 12 月-31-2009

    さて、次は「実践と理論化のどちらに重点を置いているか」という点についてだが、南外中学校が「実践」であり、京都中学校が「理論化」である。

    南外中学校の佐々木先生は、「教員がやるべきことは、とにかく良い実践を行うこと。
    理論化は学者や文部科学省に任せればいい」というスタンスを取っていて、その基盤にあるのはやはり「子どものため」という教育哲学である。
    教員や学校が本来の時間を削って理論化を成功させたとしても、
    それは社会全体にとって意味のあることでも、目の前の子どもたちにとってそれほどプラスになることではなく、
    あくまでも今までの実践を振り返りながら、より良い実践を行えるようにしていくことに意味があると考えているのである。

    京都中学校は、著書からも読み取れるが、実践もさることながら理論化に力を入れている。
    それは、研究協議会の様子にも顕著に見られて、研究協議会の講演会では上越教育大学の助教授が発表をし、
    分科会では助言者として前出の文教大学名誉教授であり日本進路指導学会名誉会長の仙崎武氏を始めとして、
    帝京大学名誉教授、千葉大学教授、京都教育大学教授、関西大学院教授、アントレプレナーシップ開発センター事務局長などの名が連ねているところを見れば一目瞭然だろう。

    とは言え、研究開発指定校ともなれば多少の理論化の必要性は出てくることや、理論化はキャリア教育の普及や全体の質を底上げに寄与することから、
    理論化の傾向事態を安直に批判することは避けるべきかも知れない。
    京都中学校ほどの規模の学校ともなれば、全ての教員がそれぞれの実践を把握することは難しいだろうから、
    ナレッジマネジメントの意味でも、同僚や後任の教員に実践を体系化して伝えるという観点からは理論化は有効である。

     「キャリア教育がはじまった契機」については、南外中学校が「実感からのボトムアップ」のに対し、京都中学校が「論理によるトップダウン」と記した。
    これは、先ほどの「どこに目が向いているか」で書いたことや、「実践と理論化のどちらに重点を置いているか」ということにも共通しているが、
    京都中学校においては行政あるいは学校長からトップダウンでキャリア教育が下りてきたと考えられる。

    同じく表中の「答申や報告書などの扱い」の項が、京都中学校では「翻訳対象」であるとしたのもここに起因する。
    すなわち、上から下りてきたキャリア教育というものを、報告書や理論家のアドバイスをもとに、
    とにかく正確に「翻訳」して正確に実践しようとしているように感じられるのである。

    「どこに目が向いているか」のところで、「綺麗な言葉が使われすぎている嫌いがある」と記した理由は、まさにこの部分にあり、
    自分たちの言葉ではない誰かの言葉、借り物の言葉でキャリア教育が語られすぎているような感を受けるのである。
    この点、南外中学校においては、第2章でも述べたとおり、いち教員の実感から現場からのボトムアップでキャリア教育の取り組みが始まっている。
    佐々木先生が「人生を教えたい」という思いのもとに、必要だと考えられた教育実践をしてみたら、それがたまたまキャリア教育だったという程度のもので、
    当たり前に必要でだと考えているからとにかく気負うところがない。
    このため、答申や報告書は、それこそ「引用対象」であり「参考程度」に見るものであって、「翻訳対象」にはなり得ないのである。
    これらの違いは、たとえば南外中学校と京都中学校の教員をそれぞれ一人つかまえて
    「キャリア教育って、つまりどういう教育ですか?」という質問をしてみれば、すぐに分かるのではないだろうか。

    筆者の場合、前者は平易な言葉で思うところを忌憚なく述べてくれたのに対し、後者は報告書にあるような文面をところどころ引用しながらの説明であった。

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    【論文発表】キャリア教育_キャリア教育に関する分析と考察③

    admin on 12 月-30-2009

    こうした出版行為を「目の前の子どものため」と言い切るにはやはり無理があるだろう。
    また、研究協議会参加者は数百名にも上り、研究協議会後では、副校長は結びつきの強そうな参加者(招待者)への挨拶で忙しく、
    また当日スタッフは関係者の接待の準備で非常に慌しい様子だった。

    また、「アントレプレナーの公開授業・分科会」に顕著であったが、普段の授業風景を公開しているというよりも、むしろ「お披露目」的な感を受けた。
    例えば、2章で紹介した5年生の「新京都観光案内 ~京都へ、ようこそおこしやす~」では、
    観客からの笑いを取ったり、関心を引こうとして趣向が凝らされていた感があるが、
    指導案を見ると23時間のうち半分近くの授業時間が何らかの形で発表のため(発表内容のためではなく)に使われていたようである。

    もちろん、それは「プレゼンテーション技術の向上」に貢献するものではあるだろうが、
    観客の目を意識し過ぎて度を越えたものとなっていたのではないかという疑問が生じる。
    こういった点を考慮するに、京都中学校の教育は「子ども」と「社会、行政、教育関係者」を並べた時に、
    ステークホルダーである「社会、行政、教育関係者」との良好な関係を保つ立場から、
    彼らに向けての教育発信のほうに重心を置いてしまうことが少なくないのではないかと考えられるのである。

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    【論文発表】キャリア教育_キャリア教育に関する分析と考察②

    admin on 12 月-29-2009

    次に、「どこに目が向いているか」ということに関しては、
    南外中学校では「子ども」とし、
    京都中学校では「社会、行政、教育関係者」とした。

    南外中学校においては、佐々木先生の教育哲学の1つとして、教育を実施するに当たって、
    徹頭徹尾、「つまりは子どものためになっているか」という姿勢があり、
    また南外中学校の3つの経営理念のうちの1つが「初めに生徒ありき」 であることからも、
    南外中学校におけるキャリア教育実践の全てが「子ども第一主義」という視点のもとに行われていると断じて問題ない。

    京都中学校は、「子どもに目を向けた問題意識」を掲げてはいるものの、
    実際の取り組みが全て「子どものため」という意識のもとに行われていると断じてしまうには不可解な点がいくつかある。
    それは、「本の出版行為・本の内容」「研究協議会の当日の様子」「アントレプレナーの公開授業・分科会」などに見られる。
    「本の出版」というのは、対外に向けて研究結果を示すにはちょうど良い代物ではあるが、形になるまでにそれなりの作業量が必要なものでもある。
    出版の流れを簡単に記してみると、
    まず出稿に始まり、入力や原稿整理、本文や表紙のデザインの決定、校正作業が必要な初校、再校、3校と通常数ヶ月にもわたっての作業が必要となる。

    前掲の『これならできる「キャリア教育」小・中学校の実践』には、教員・校長など50人以上が執筆に携わっており、
    執筆活動によって削られた活動時間は、授業準備時間や子どもとのコミュニケーションの時間などを多少なりとも圧迫したのではないだろうか。

    また、本の内容を見てみると、どこの学校でも通用しそうな綺麗な言葉が多用されており、
    目指すべき目標地点や理想の教育手法・生徒像などがはっきりと示されているので、見た目としては非常に整っているように感じられるのだが、
    使われている言葉に一般性があり過ぎる嫌いがある。

    記述内容があまりにも社会のほうを向きすぎていて、
    読み進める内に、本当の意味で「子ども」のほうを向いたキャリア教育が行われているのかが不明になってくるのである。
    つまり、「子どものために」実践しているというよりは、「社会にとって不可欠だから」実践している、という感じを受けるのである。
    また、京都中学校の生徒の特徴や京都の地域性などには一切触れることはなく、どこでも実践できそうな内容にもなっている。
    この点、南外中学校は対照的で、研究開発指定の報告書を見てみると「本研究を通して育てたい生徒像」として、以下に示す6つを挙げ、
    次に「キャリア教育的視点からみた本校生徒の傾向」として、以下に挙げる13もの特徴を示しながら、
    「目標と生徒の傾向から考えられる研究の重点」として
    「重点Ⅰ・多様な集団、世代との交流活動 ~ 自己理解・他者理解を深め、コミュニケーション能力の育成する」
    「重点Ⅱ・啓発的体験活動の工夫 ~ 将来の職業生活を理解し、視野を広げ、中学生である自分を見つめる」
    「重点Ⅲ・キャリアプラン制作 ~ 自らの将来を見通し、社会生活と学校生活での学びを関連づける活動の工夫」の3つを示している。

    つまり、目指す目標に向けて、地域性・生徒の特徴(良いところも悪いところも)を分析し、
    社会情勢などとも照らし合わせた上で、生徒に最も適したキャリア教育を行おうという姿勢を取っているのである。

    この場合、他の地域で同じ実践をしても、最大限の効果を上げることはできないと考えられるため、
    一般性はないだろうが、目の前の子どもたちに対して最も必要で効果的だと考えられる教育を真摯な姿勢で施していると捉えることができる。
    京都中学校がもし真に「子ども」のほうに目を向けた実践を行っているのならば、
    「本の内容」も、キャリア教育は「社会に不可欠」で、「子どもの夢を支援するため」、「現行教育に革新をもたらすもの」といった具合の曖昧な記述をするのでなく、
    京都中学校の教育理念、生徒の特徴や地域性、社会情勢とをつき合わせて十分に考慮した上で、
    キャリア教育が現時点で、京都中学校の生徒にとって最も適した教育の視点・手法である、といった記述内容となるのではないだろうか。

    Ⅰ.本研究を通して育てたい生徒像
    ①自分の良さや個性が分かり、他者の良さや感情を尊重し、他者に配慮しながらも積極的に人間関係を築こうとする生徒
    ②生き方や進路に関する情報を、体験やメディアを通して調査・収集・整理し、活用できる生徒
    ③体験等を通して、勤労の意義や働く人々の様々な思いをわかろうとする生徒
    ④将来の生き方と日常の生活や学習との関係を理解し、当面の目標を立て、その達成に向けて努力する生徒
    ⑤選択の意味や判断・決定の過程、結果には責任が伴うことを理解し、個性や興味・関心等に基づいて、よりよい選択をしようとする生徒
    ⑥自ら課題を見出すことがよりよい生活、学習、進路や生き方につながることに気づき、その課題に積極的に取り組み、主体的に解決していこうとする生徒

    Ⅱ.キャリア教育的視点からみた本校生徒の傾向
    ①豊かな自然環境の中で生徒は伸び伸びと生活し、素直で純朴であり、挨拶もしっかりできる。
    ②2世帯、3世帯同居の家庭が多く、家族から躾など多くの教訓を受けている。
    ③清掃、係活動や指示されたことなど、任された仕事は確実にやり遂げる。
    ④善悪の判断が身に付いており、正義感も強い。また、時間や規律をきちんと守る。
    ⑤授業に対する意識も高く、課題に対して真剣に取り組む。
    ⑥個よりも集団を大事にし、諸活動において目標に向け集団としての力を発揮できる。
    ⑦他校との交流学習等においても、人間関係における配慮や公私の分別等が概ねできる。
    ⑧受動的で依存性が強く、自ら気づいて進んで物事に取り組もうとする主体性に乏しい。
    ⑨集団を重視するあまり、自分の良さに気づいていない生徒がみられる
    ⑩基礎学力の定着が図られてはいるが、高い目標に向かう意欲や態度などが育っていない。
    ⑪山村部であるため、家族を中心とした限られた人との関係だけになりやく、多様な世代に触れる機会が少ない。
    ⑫企業数が少なく、多種多様な仕事に触れる機会が少ない。
    ⑬高校、大学などに対するイメージが薄い。将来に対する見通しが甘く、学習意欲の低い生徒がみられる場合がある。

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    【論文発表】キャリア教育_キャリア教育に関する分析と考察①

    admin on 12 月-28-2009

    この章では第3章の内容を踏まえ、まず第1節では、第2章にて紹介した2つの実践を比較しながら踏み込んだ分析と考察を加えていきたい。
    そして、第2節では、キャリア教育とはなぜ推進する必要があるかについて第3章で挙げた意義とは多少異なる視点から論じ、
    第3節ではキャリア教育を推進・実践するにあたっての留意点を述べたい。

    まずは、学校の属性と学校の規模についてだが、
    南外中学校は秋田の田舎の公立校で、1学年あたり1クラスしかなく、学校全体でも100人前後の小規模校である。

    一方の京都中学校は、京都教育大学教育学部の附属校で、都市圏に立地、クラス数は1学年あたり4クラスあり、中学だけで400人弱、
    小中合わせると1000人以上の生徒が在籍している大規模校である。

    南外中学校では、教員一人一人が1年生から3年生までの生徒を見知っていて、生徒の変化にも気付きやすいが、
    京都中学校ほどの規模ともなると、全体を見渡すことはなかなか難しくなってくるだろう。
    ここまではハードの部分であり、これ以降がソフトの部分、すなわちキャリア教育の具体的な実践の特徴となる。 

    まずは、「誰がリーダーシップを発揮しているか」であるが、南外中学校のほうは第2章でも何度となく触れたように、
    佐々木先生という30代の若手教員がキャリア教育を行うにあたり、リーダーシップを発揮している。
    また、校長からは「好きなようにやっていい」という御墨付きを受け、周りの年上の教員を巻き込みながらの実践となっている。
    キャリア教育の研究開発指定を受けた経緯は、佐々木先生個人の取り組みに対する評価である。

    一方で、京都中学校のほうは第2章でも紹介したように、
    研究開発課題が“「9年制義務教育学校」の設立に向けた小中学校9年一貫教育システムの確立に関する研究開発 であり、
    小・中連携から小・中学校9年一貫教育を展望する新しい義務教育学校をデザインするものとして、
    教育課程の研究開発だけでなく、学習組織や児童・生徒集団編成、教職員組織編制、教職員組織や教授組織、
    また学校運営組織や施設・組織の共用、拡充に関する研究開発が進められている。
    という文面を見るに、研究開発テーマの多くがハードやシステムに属するものであること、
    また大学附属校であるという属性も考慮に入れると、個別の教員がリーダーシップを取っていると考えるよりは、
    学校(管理職)もしくは大学が文部科学省から委託を受けるような形で(あるいは主導する形で)研究開発が行われていると見るのが妥当だろう。

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    【論文発表】キャリア教育_職場体験実施に伴う教育関係者への負担、教育課程への負担②

    admin on 12 月-27-2009

    実際に学校現場で職場体験を実施しようとすると、現場教員や学校、教育委員会に大きな負担がかかるのもまた事実である。

    職場体験を実施するには、まず生徒の受け入れ先を探さねばならない。
    推進地域の一つであった東京都町田市では、3ヶ月間で中学2年生徒3157人分の受け入れ先として857事業所を確保したが、
    その際は事業所確保が難航したために市教委・校長・副校長らによるローラー作戦が行われた。

    また、その受け入れ先の内訳は、
    卸売・小売り690人、保育・幼稚園541人、医療・福祉320人、小学校213人、市役所202人、飲食店・宿泊業151人であったが、
    事業所の対象のなかに小学校までが含まれているところに事業所確保の困難さが見てとれる。

    町田市における事業所からの受け入れ拒否の主な理由は、
    (職場体験実施時期の9月は)決算期で中学生に対応できない、中学生にさせる仕事がない というものであった。

    こうして事業所の確保が終わった後は、生徒が希望する職種・職場先に関してのアンケートを取り、生徒に職場を割り当てる。
    また、実施前の事前学習を行い、事業所とは「どのように受け入れ、どのような体験をさせるか」という打ち合わせも行う必要がある。

    実施中には、生徒の体調不良、欠勤、生徒自身のけが、職務上の過失などに対処する必要がある。
    実施後には、生徒に対するアンケート、事業所へのアンケートが必要であり、そのアンケートを集計・評価・報告する作業もある。
    第2章でも書いたことだが、職場体験は単年度だけで終われるものではなく、次年度以降も継続性が求められるものであるから、
    アンケートの結果から次年度以降の改善策を議論することや、次年度実施に向けて事業所とコミュニケーションを取る必要もある。

    職場体験を実施するにあたって、労力的な問題だけでなく教育課程への負担も大きな問題である。
    職場体験を5日間実施するということは、30時間という連続した授業時間が職場体験に費やされるということでもある。
    これに事前学習や事後学習も加わる。
    町田市では、職場体験を行う5日間28時間以外に、準備学習・計画・まとめ・報告会などでさらに17時間、計45時間使うことになっており、
    これらの時間を「道徳」「特別活動」「総合的な学習の時間」などのまとめ取りで実施している。

    この職場体験に連続して費やされる授業時間は教育課程に多大な負担を与える。
    南外中学校も町田市と同じく5日間の職場体験を実施しているが、佐々木先生は、教育課程への負担という問題の具体例として
    英語の場合、中学生は英語にそれほど馴染みがあるわけではなく、
    英語の授業から一週間遠ざかるだけでその後の授業進行にも大きな影響が出てしまう」ことを挙げており、
    「だからこそ、職場体験を実施するに当たっては、教員間での連携がいつになく重要」であると述べている。

    最後に費用の問題であるが、
    町田市では17年度の職場体験費用(教師・生徒の交通費、対物保険、連絡通信費)として約4000万円、
    生徒1人あたり約1万円の費用が発生している。

    町田市の2006年度の小学校40校、中学校20校の管理運営費(教材備品の購入費、警備の委託料、光熱水費など)の予算が、
    20億5077万5千円であることを考えると(単純計算で、中学校予算は7億弱)、
    中学校1学年のみの活動に対して新たに独自に4000万円の予算をつけることはそう容易ではない。

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